田村式計画産児法 第2講 2012年5月9日アップ
1.これから田村式とは、どんなことかをお話していきます。本当はわかりやすく整理した方がよいかと思うのですが、とりあえず田村先生の本から要点を抜粋してご紹介したいと思います。内容が重複するところもあると思いますがご了承ください(以下、田村いとの著 田村式計画産児法 昭和60年12月発行の第8版から。この本の初版は昭和30年5月発行)。
2.「はしがき」から
@私は約50年間妊娠に関する研究を続けて来た女性であるが、そのうち昭和10年から現在迄に多数の婦人達について、月経周期と排卵自覚と基礎体温及び妊娠との関係、その時の気象、各婦人の健康並びに生活状態につき克明に調査し、統計的観察をして来た。
A正常婦人には先行月経から数えてきまった期間に排卵期があること、その排卵期は次に 妊娠する迄は変わらないこと、毎月の排卵自覚日は次回月経の遅速には関係なくほぼ予定出来ること等を知った。
B私は田村式計画産児法を約40年間に多数の婦人達に実験していただいた結果、正常婦人では田村式の不妊期に妊娠した婦人は一人もいない。
C生理がどんなに不順でも田村式では妊娠日が予定できる。
3.正常婦人の排卵期(基本月経周期と実際の月経周期)
@正常婦人というのは完全に成熟した生殖器を持った婦人で現在授乳していない婦人のことである。この正常婦人には基本月経周期があり、それは次に妊娠する迄は変わらない。そして、その基本月経周期に応じた一定の排卵期(6日間)があり、それは先行月経開始日から数えてきまった期間内にある。
実際の月経周期については、健康で平和な生活をしている時は基本月経周期と同じか、又はそれに近く、貧血・病気・過労・ストレス等の時は基本月経周期よりもずっと長くなることがあるが、排卵期は遅くはならないので排卵期から後が長くなる。又は旅行・運動・その他の過激な行動をした時は実際の月経周期は大変短くなることがあるが、矢張り排卵期は変わらないので排卵期から後が短くなる。授乳中とか、更年期とか、又は妊娠しない婦人の中には排卵期の変わる婦人もあるが、妊娠する婦人で排卵期の変動する婦人は私が約40年間調べた中に3人しか発見できなかった。つまり正常婦人では排卵期はきまっていて、排卵期から次回月経迄の間が変動するのである。
正常婦人286名の排卵期の調査結果
基本月経周期
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排卵型の名称
基本月経周期から16を引いた数が第一排卵日になります
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月経開始より〜数えての排卵期(6日間)
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人数
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24日間
25 〃
26 〃
27 〃
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第1排卵日8日型(24-16)
〃 9日型(25-16)
〃 10日型(26-16)
〃 11日型(27-16)
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第1排卵日〜第6排卵日
8日目〜13日目
9 〃 〜14 〃
10 〃 〜15 〃
11 〃 〜16 〃
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2
8
12
45
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28 〃
29 〃
30 〃
31 〃
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〃 12日型(28-16)
〃 13日型(29-16)
〃 14日型(31-16)
〃 15日型(31-16)
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12 〃 〜17 〃
13 〃 〜18 〃
14 〃 〜19 〃
15 〃 〜20 〃
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75
13
98
14
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32 〃
33 〃
34 〃
35 〃
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〃 16日型(32-16)
〃 17日型(33-16)
〃 18日型(34-16)
〃 19日型(35-16)
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16 〃 〜21 〃
17 〃 〜22 〃
18 〃 〜23 〃
19 〃 〜24 〃
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8
2
1
5
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36 〃
37 〃
40 〃
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〃 20日型(36-16)
〃 21日型(37-16)
〃 24日型(40-16)
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20 〃 〜25 〃
21 〃 〜26 〃
24 〃 〜29 〃
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1
1※1 1※2
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合計286名
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※1:2人出産後第一排卵14日型となる
※2:3人出産後第一排卵14日型となる
月経開始日から数えて11日目〜19日目までに排卵をおわる婦人は81%
月経開始日から数えて 8日目〜20日目までに排卵をおわる婦人は94%
月経開始日から数えて 21日目以後にも排卵日のある婦人は6%
各自6日間の排卵期のうち、年間を通じての統計表
第1排卵日に排卵した割合→ 関西で12%、関東で10%
第2排卵日に排卵した割合→ 〃
29% 〃 40%
第3排卵日に排卵した割合→ 〃
27% 〃 43%
第4排卵日に排卵した割合→ 〃
23% 〃 7%
第5排卵日に排卵した割合→ 〃 5% 〃 0%
第6排卵日に排卵した割合→ 〃 4% 〃 0%
東京で第5、第6排卵日が少ない理由は下記による
最近10年間の快晴日数 12月 1月 2月
(気象庁記録) 東京 117日 125日 73日
大阪 50日 44日 30日
東京では第2と第3排卵日が特に多く、関西では第2と第3と第4排卵日が大体平均して多い。
4.排卵日の自覚及び妊娠との関係
@排卵自覚日の前後数日間ずつ分泌物を感じる場合が多く、排卵自覚日には、それ迄何ともなかった下腹部に突然膨満感や腹痛又は腰痛、腰の張る感じ等を感じ、その感じの後に帯下(おりもの)を感じる場合が多い。それは無色無臭で卵白のような感じのもので少量であり、月経開始時のような感覚を覚えるのである。そしてこの帯下の中に少量の血液がまじる場合もあり、これは排卵出血とか中間経などと云われているが、之を月経や病気(癌)と間違えて心配する者もある。
このような排卵日の自覚はごく短時間のかすかな感覚である場合が多いからその時丁度走っているとか、乗り物でゆられているとか、何かに心をとらわれている等の時は気付かないことが多いが、排卵予定日の当日注意して静かにしていると大抵わかるものであって、座った姿勢よりも立っている方がよくわかる。
Aこの自覚が大体の処午前中にある時は、その前夜の交渉では普通妊娠せず、この自覚が午後にある時のその前夜は普通妊娠し、つまり自覚前10時間位の間は妊娠せず、自覚前19時間位の関係では妊娠しているというような例により、時間的にはこの自覚の時刻から大体3日13時間余り前迄の処が妊娠し、3日14時間を境としてそれ以前の関係では妊娠した例がないので、受胎可能の交渉時間は約3昼夜ということになる。故に日数では、排卵自覚日の前夜と4日前の夜は50%の妊娠率で、2日前と3日前の夜は最高の妊娠率となるので、妊娠したい時は2日前と3日前とを選び、避妊の時は4日間を避けるべきである。
排卵自覚と受胎との日数的関係
排卵自覚日 自覚があった日の夜から妊娠しない
(前夜) 約50%妊娠
(2日前) 最高によく妊娠する
(3日前) 〃
(4日前) 約50%妊娠
(5日前) 妊娠しない
5.気候による排卵日の変化
@6日間の排卵期のうち、毎月第何日目に排卵自覚があるかは、気候によって変化、移動する。
一般に排卵自覚日は、夏の晴天続きが一番早く、冬の曇天続きが一番遅く、春と秋は二番か三番目位が多いものであるが、それは月経開始日から排卵自覚日迄の間の日照時間と日照程度によって変化する。
A例えば第一排卵12日型の排卵期を持った婦人は、夏のかんかん照りの時には月経のはじまった日を1と数えて弟12日目に排卵日の自覚がある場合が多く、今迄の調査ではこの第12日目の記録は4月から10月迄のひるまの長い約半年間の間にあった。同じ時期では月経開始日から排卵自覚日迄の間の何割が晴天か曇天(雨天は曇天とする)かによってその日数が変わるわけだ。
B夏では殆ど晴天がつづくと12日目、その間の約3分の2が晴天ならば13日目、その間の約3分の1ならば第14日目、全部曇天ならば第15日目で、梅雨の時は大体14日目が多く、この15日目の時は特別の曇天つづきで、平均気温が27度で会ってもこの第四排卵日になることがある。
C春と秋は第一排卵12日型では第13日目と第14日目が多いが、4月から10月迄の間の晴天続きでは第12日目のこともある。そして曇天の日が多くなると、第15日目や16日目の事もある。
冬昼間の時間が短い冬季では、晴天つづきでは第13日目、それから曇天が多い程遅くなって第16や17日目のこともときたまある。
Dこのような日数の問題は戸外で働いている婦人と家の中で暮らしている婦人とでは変わりはなかったが、地下室については未調査である。尚正常婦人の身体に人工的に光線を加えると、排卵日が田村式の予定日よりも早くなることがあるようなので注意していただきたい。
E第一排卵12日型が13日目の時は同じ土地では第一排卵14日型は大抵15日目であり、他の型も之に準じて移動する。
F北極圏に住むエスキモーの婦人は太陽の当たらない半年間は月経がないといわれている。これは「太陽が当たらない間は排卵がない」ということになる。このように卵子の成熟にとって大切な太陽光線であるから、日照時間が長くて日照程度の強い時に排卵日が早いということは「生気象学」の一つとして皆様にも納得して頂けると私は考える。
※以上では、チョッと分かりにくいと思いますので、次回、再度説明します。
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