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無塩食講座第20講 


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無塩食講座 第20講 2012613日アップ 

咀嚼について

 

1. ちょうど3年ほど前に、鳥影社から「ウイルスは恐くない」を出版させていただきました。先日、鳥影社と相談し、出版契約を解除させていただくことになりました。

  したがって、「ウイルスは恐くない」の原稿は、同じものを私が自由に転載することができることとなりました(出版契約があれば、著者といえども、同一文書を他ヘ自由に使うことはできません)

 

2.そんなわけで、この講座は、当分「ウイルスは恐くない」に書いた原稿を転載させていただくことにしました。すでにこの本をお読みの方は、同じ原稿となりますが、ご了承ください。

 

3.今回は、「咀嚼について」の原稿です。食物に感謝して、ゆっくり噛んで食べることは、本当に大切なことです。何でも良いからたくさん噛むということではなくて、食物に対する感謝の気持ちがあれば、自然にゆっくり味わって、噛んで食べることになるわけです。

 

4.25年程前に横浜で健康指導の仕事をやっていた頃に、「玄米を1100回噛みなさい」と誰かれなしに言っていました。40歳代の男性(十二指腸潰瘍の人)が、「玄米を噛んでいるとお腹が痛くなる]と言うのです。それは、噛んだせいではなく、別の問題だろうと思っていたのですが、後日、大森先生に報告相談したところ、「十二指腸潰瘍で重症の人は、玄米を噛んだらダメだ」とのことです。「えー、じゃー先生どうするんですか?」「玄米のおかゆにしなさい」。

 

5.玄米を噛んで食べたら、かえって悪化する場合があるということを、その時に初めて知ったのです。それまでは、病気も体質も関係なく、なにしろ玄米をよく噛む。50回より100回、100回より200回、よく噛むほど良いと思っていました。

 

6.「噛む」という刺激は陽性な刺激です。ですから、よく噛むと体全体がグーと締まってくるのです。十二指腸潰瘍は陽性な病気で、ゆるめないといけないのです(胃潰瘍は陰性だから、よく噛むのが正しい)。

  硬い玄米をよく噛むと、よけに締まってくるのです。おかゆを食べることと玄米を噛んでおかゆ状になったのを飲みこむのと、同じようなものと思っていたのですが、そうではないのです。

 

7.昔の水断食の注意事項の話の中に、「復食時にせんべいを食べて悪化した」という話があります。昔の水断食は短い人でも1週間、長い人は1カ月の断食をやっていたわけです。その後の復食時に、猛烈な食欲に負けて買い食いしたのが「せんべい」で、それを食べて腸粘膜が破れて出血して、死にかかったというわけです。

 

8.せんべいは、硬く焼いて塩気もあり強陽性なものです。いかによく噛んで食べても、これが胃から腸に流れて行くと、腸粘膜がギューと引きつったように縮んでしまうわけです。それが部分的に起こるために、(長い断食で赤ちゃんのような腸になっているため)

切れてしまうわけです。

 離乳食に硬いせんべいを食べさせることはありません。しかし、マクロの勉強をした人で、離乳食を陽性にしすぎて失敗した話はよく聞くことです。

 

9.一般的に「せんべい」が好きで、ポリポリ食べている人は、陽性過多になり体も硬くなる(精神的にも緊張しやすい?)傾向があります。圧力鍋で炊いた玄米よりせんべいは陽性ですから、注意してください。ヨーロッパのマクロの人達は、硬いクッキーを食べて悪化している場合がよくあります。とにかく、硬いものは陽性であり、それをかんでドロドロになっても陰性にはならないのです。

 

以下、「ウイルスは恐くない」より

 

 咀嚼について

 

何を食べるべきかということと、どう食べたらよいかという問題があります。本当は、食べものに感謝して、ゆっくりよく噛んで食べたら、間違うことはないのですが、良いものでも、過食したら毒になります。玄米を嫌々食べるより、白米を感謝して食べる方がまだいいと思います。食生活を正すにはどうしたらよいか、感謝して、ゆっくりよく噛んで食べることが、一番大切なのです。

 今までお話してきた食べものの知識など、本当は必要ないのです。何も知らなくても、与えられた食べものに、心から感謝して、ゆっくりよく噛んでいる人は健康であり、もし病気になっても、自然に治っていきます。感謝して食べている人は、本物の内なる知恵が働いていて、必要ないもの、悪いものを、無意識のうちに避けているのですから、中途半端な知識など必要ありません。

 昔、アメリカにフレッチャーさんという人がいました。肉も甘いものでも何でも過食、大食を長年続けて、その結果、高血圧、糖尿病、心臓病で、体重は100kgになっていました。お医者にかかり、高血圧の薬、糖尿病の薬、心臓病の薬を毎日飲むのですが、さっぱり治りません。体重を減らさなきゃとわかっていても、栄養を摂らないといけないと思って、たくさん食べていましたから、さっぱり減りませんでした。

 何とか健康になりたいと願っていた時に、「食物をよくかむことが大切」と聞き、何でもやってみようと思い徹底的に噛んで食べ始めたのです。

その結果、どうなったか。半年後に体重は65kgとなり、高血圧も糖尿病も心臓病も、色々な症状も、全て治ってしまったのです。その変化にビックリしたフレッチャーさんは、噛む健康法を「フレッチャーイズム」と名づけて、それを広めるために、自分の体験を世界中回って、講演したのです。日本にも来て、しばらく横浜に住み、各地を講演して回ったことが記録に残されているそうです。彼の書いた本は日本語にも翻訳され、「完全咀嚼法」という題で1931年に発行されたことが、「フレッチャーさんの大発見」(市来英雄著、医師薬出版株式会社刊
2625)という本に記されています。

なぜ、フレッチャーさんは、噛むことだけで健康体に生まれ変わったのでしょうか。その理由を解説します(本当は、理由も理屈も要らないのですが、私と同様に頭で理解したい人のために)。

一膳の玄米を12003分かけて噛んで食べたとします。13分ですから10口で30分かかり、軽く1膳でも1時間位かかりますから容易なことではありません。よく噛むと、唾液がドンドン出てきます。唾液の量は、噛む回数に比例して出てきます。口に放り込んで、すぐに飲み込んだら、唾液はろくに出てきませんが、1膳の玄米を1200回噛んだ時には、お茶碗3杯分の唾液が出てきます。唾液はどこから出てきたか、体内から口の中に出てきたのですが、口の中は、体内ではないのです。胃の中も、腸の中も、体内ではないのです。

「そんなバカな。胃の中は体内じゃないか」と思われるかもしれませんが、生理学的にも正確な意味では、体内ではありません。口から肛門までの消化管の中は、体外であって、胃や腸から栄養分が吸収されて、初めて体内に入るのです。検査で胃カメラを飲むことがあります。体内ではないから、カメラが入るのです。

ところで、一般的に私達は、食べたら栄養を摂ったつもりになっていますが、これは錯覚です。カロリーをいくら摂ったとか、栄養をどれだけ食べたとか、そんな計算をしても、本当はムダなことです。食べたものが胃や腸からどの程度吸収され、役に立っているか、計算できません。誰でも体験していることですが、下痢した時には、食べものが大部分出てしまっているわけであり、栄養分はろくに吸収されていないのです。ですから、口から入れた栄養分と、本当に吸収されて役に立っている栄養分は比例しません。人によっては、三分の一も役立っていないのです。ムダに3倍も食べていることになります。

さて、フレッチャーさんは、よく噛んで食べて、唾液をドンドン出しました。唾液という水分が体内から口の中、すなわち体外に出てきたのです。体の中の水分が外に出てくるのですから、当然、体重が減ってくることになります(体重が減るということは、余分な水分や脂肪が代謝したということであり、骨や内臓の重さが変わるわけではない)。昨年、三島の半断食セミナーに若い女性が参加しました。彼女はその時には、体重が85kgで、顔も丸く太っていたのですが、帰宅後、玄米を徹底的に噛んで食べたとのことです。報告の手紙をもらい、再度セミナーに参加したので、直接その体験を聞いて、皆ビックリしました。23ヶ月で体重が20kg以上減ったのです。本人は、玄米を噛んで食べたらドンドン体重が減ってきたというのです。水太りの人は、よく噛むだけで断食するより早く痩せることが珍しくありません。

フレッチャーさんは、過食、大食の人でした。しかし、よく噛んで食べ始めたら、とたんに少食になってしまいました。これも当然なことで、3倍の量の唾液が一緒に胃の中に入るのですから、玄米1膳食べた場合なら、口の中でおかゆ状になり、それを飲み込んでいます。3倍分の唾液が一緒に入るとすれば、おかゆ4杯飲んだことと同じなのです。よく噛んで食べたら、過食できないのです。あと1口のご飯が、もういらないという感じになります。

次に、フレッチャーさんは、食事の好みが変わってしまいました。それまでは肉、魚、卵、油っこいもの、ピリ辛の刺激物など、悪いものが大好きでした。ところが、噛んで食べるうちに、肉類をあまり要求しなくなってきたのです。逆に黒パンとか野菜が美味しくなってきました。これも当然なことなのです。よく噛んで美味しいものは、穀物や野菜なのです。肉を100回噛んで食べる人はいないのです。肉食動物は、肉を噛みちぎってすぐに飲み込みますが、草食動物は牛のようによく噛んで食べているのです。

そんなわけで、フレッチャーさんは、いつの間にか食生活が正され、少食となり、血液がだんだん浄化されて、半年後には病気が全て治ってしまったのです。また、よく噛むと、心が落ち着いてきます。自律神経が安定してくるのです。頭が良くなるという研究報告もあります。

満腹するから病気になるのです。間違った食事は、満腹しても何か物足りないのです。正しい食事なら、満足感が出てきます。よく噛んで食べると、内なる声としての正しい満足感が出てきて、「ハイ、もう十分ですよ」と教えてくれるのです。

 

コラム

【復元食の咀嚼回数と食事時間】

 各時代の復元食から、咀嚼回数と食事時間を計ったデータがあります。

※源頼朝(鎌倉時代)  2654回・29

 (メニュー例:イワシの丸干し、梅干、里芋とわかめの味噌汁、
  玄米のおこわ)

※徳川家康(江戸時代) 1465回・22

(メニュー例:ハマグリの塩蒸し、里芋とごぼうなどの煮物、タイの焼き物、カブの味噌汁、納豆、麦飯)

※戦前         1420回・22

 (メニュー例:大豆の味噌炒め、タクアン、野菜の味噌汁、ニンジンと大根などの煮物、麦飯)

※現代          620回・11
(戦前と比較しても、咀嚼回数が半減している)

 

【参考文献】斉藤滋「咀嚼とメカノサイトロジー」『咀嚼システム入門』 
      凡人社

 

 

 

                     以下、次号につづく


                            

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